小学6年生のその生徒は、中学受験に向けて勉強中でしたが、思春期の入口にあたる時期特有の反抗期まっただ中。勉強に関して家庭で衝突が絶えず、そのたびに保護者様から塾へ相談が寄せられていました。
勉強法ややる気の話題が中心でしたが、次第に家族間のすれ違いなどのセンシティブな相談へと変化していきました。家庭ではすぐ口論になってしまい、話し合う余裕がないとのこと。そこで、生徒が自分の気持ちを冷静に整理し、言葉にできるよう塾で三者面談の場を設けることにしました。
はじめは、面談中なかなか自分の思いを伝えることができず、言葉に詰まってしまうことが多々ありました。そこでまずは生徒と1対1で面談し、思いをゆっくり引き出す時間を持つようにしたところ、のちに行った三者面談で少しずつ自分の考えを言葉にし、伝えられるようになっていったのです。
「どうせ何を言っても伝わらない」。そうあきらめかけていた生徒が、面談を繰り返していくうちに勇気を持って言葉を紡ぎ出せるようになっていき、深く心を動かされました。そして回数を重ねるごとに、その思いや声が確かに強くなり、「伝えること」をあきらめなくなっていたのです。
親子の間に立つことで、生徒が自分のために前を向けるようになる。その一歩に関われたような気がして、とても大切な機会になったと思います。