小学6年生の生徒が「諏訪清陵附属中学」を目指して入塾を希望してくれました。ただし時期は6月、夏休み目前で、受験対策を始めるには遅いタイミング。学力的にも厳しい状況でしたが、彼とお父様の強い意志を感じ、だからこそこちらも正直に合格の可能性が低いことをお伝えしました。
するとお父様はじっくりと話を聞いて下さり、その上で「不合格でも構わない。納得いくまで頑張らせたい」と頭を下げられたのです。その姿に胸を打たれ、私も全力でサポートする決意を固めました。
通塾が始まり、間もなく受けた最初の模試では記述問題がほぼ白紙。精一杯取り組んでも2,3問で用語がいくつか書ける程度でした。しかし彼はその後、授業も自習も全力で取り組み、可能な限りの時間を勉強に費やしているのが伝わってきました。それでもまだ私の中には「でも間に合わないかも…」という思いが離れませんでした。
一方の彼は試験の結果が芳しくなくても、授業内容で×がたくさんついても、ほとんど気に留めず、それどころか楽しそうに、まっすぐに勉強と向き合っていました。日を重ねるうちに、次第に白紙だった答案が埋まるようになり、そうした変化に私の複雑な思いが消え、「この勢いで突破できるかもしれない」と本気で考えるようになったくらいです。
受験当日、彼は緊張も見せず、目を輝かせて試験会場へ向かいました。応援にかけつけた私に気づかずに通り過ぎるほど、この日を精一杯の努力で迎えられたことがうれしいようでした。
結果は残念ながら不合格。しかし私は彼を見続けてきて、確かな手ごたえがありました。最初の目標に対してはスタートが遅かったけれど、この先もっともっと伸びていけるはずだと。 その後、彼は中学の3年間も自分の目標に向けて勉強を続け、志望校とした松本県ヶ丘高校に合格しました。私はお父様からいただいた「あの時中学受験をしてよかったです。だからこそ、今のこの子があると思うので」というお言葉を忘れることはないでしょう。