小6のその女子生徒は、算数がとにかく苦手でした。学校のテストも半分取れればいいほうとのことで、最初の面談では過去のテストを一緒に見ながら話をしました。ただし国語はよくできていて、漢字も得意だし、文章もしっかり読めて理解できるのです。
「これだけ力があるんだから大丈夫!苦手意識があるだけだよ!」。そう声をかけたとき、うつむいていた目が少しだけ柔らかくなりました。
彼女はあまり喋らず、恥ずかしそうにしていたのですが、そのうちに突然涙をぽろぽろとこぼし始めたのです。「どうしたの?」と尋ねると、前に通っていた塾で、「しゃべらないのはやる気がないから」「そんなんじゃ頑張ってもムリ」などと言われていたことを打ち明けてくれました。こちらの「大丈夫!」の言葉を聞いて、ほっとしたのだそうです。
大人は特定の特徴を固有の型にはめる傾向があり、「こうあるべき」といった観念にとらわれがちですが、全員に共通する「べき」なんて本当は存在しないはず。私たちのスタンスは目の前の生徒たちを信じ、その可能性を見つけて伸ばしてあげること、と私は考えています。
そして彼女の成長が、その思いを確信に変えてくれました。一緒に歩むことでどんどん成績が伸びていき、苦手だった算数の偏差値は8ヶ月で33から64に。ご家族はもちろん、何より本人がとても喜んでくれ、自信を得た彼女は以前と比べ、とても明るくなりました。
必ず誰しも力を持っています。それを見つけ、本人に伝え、前を向いてもらえるよう支えていくのが私たちの仕事なのだと感じた出会いでした。