その生徒は野球一筋で中学の3年間を駆け抜け、勉強なんて見向きもしてこなかったというような印象でした。初回の授業で「週3回も通わないとダメなんすか。ムリっすよ」と言われたのを覚えています。
そこで授業では教科書をなぞるように教えるのでなく、野球の話を交えたり、身近なエピソードを織り交ぜたりして、授業内容に興味や親近感が持てるように説明していきました。褒める時にも、ありきたりな言葉でなく、「どこが良かったのか」「何ができるようになったのか」という変化とあわせて伝えるようにしたのです。
すると授業を繰り返すうちに、モチベーションが上がってきたのか、「先生、これって他のことにも応用できるんですか?」と質問してくれたり、「もっと宿題出してください」と自分から言ってくれるようになったりと、当初からは想像もつかないような成長を見せてくれました。
もともとこの生徒の中には、勉強に対する強い興味ややる気のようなものが眠っていたのでしょう。そうした情熱のようなものを、この生徒に向いている授業はどういうものかなどを考えて実践したことで引き出せていたのなら、これに代わる喜びはありません。